これからの中学受験(1)

(1)令和元年の中学受験の現状

中学受験は近年少し持ち直してきた。森上教育研究所のデータによると平成27年2月の入試がボトムだったように見える。

年度 2月1日受験者 募集定員(東京・神奈川) 受験率 倍率
2014 36416 34568 12.3 1.05
2015 35655 34423 12.2 1.03
2016 36585 34171 12.6 1.07
2017 36893 34067 13.0 1.08
2018 37939 33950 13.7 1.11
2019 39759 34080 13.9 1.16

森上研究所では、毎年2月1日校の受験者を合計している。2月1日は東京・神奈川の私学の入試解禁日になる。したがって2月1日の受験者を東京・神奈川の学校の定員で割れば倍率を比較することができる。また受験率は2月1日の受験者数を1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の小学校6年生の総数で割っている。

これは分母がかなり大きくなっているので、受験生が多くいる地域ではこの数字に実感がわかないだろう。実際に2月1日は学級閉鎖状態だったところも多いのだが、全体でみるとまだこのくらいの数字になる。それでも2019年は14%に近づこうとしているのだから、かなり熱が入ってきたといえるだろう。

この原因は、明らかに大学受験の不透明化にある。

ご承知の通り、2020年からセンター試験がなくなり、大学入試は新たに共通テストがスタートする。ここに英語の民間試験の導入と記述問題が加わることになっていたのだが、早くも2019年11月1日に文部科学省は民間試験の導入の延期を発表した。また記述試験についても、採点ミスが0.3%発生するというデータが公表されて公平性が保てるのか、議論が再燃している。

だったら、大学入試のない学校に行くのはどうだろう、というので、大学付属校の人気が上がっているのは間違いない。

明大中野という明治大学の継続校がある。明大中野は明治大学を運営する学校法人とは違う学校法人が運営している。だから明大中野八王子という学校も存在するわけだが、それはさておき、この学校のここ3年間の第1回の応募数を見てみると

第1回 第2回
2017 882 750
2018 896 756
2019 1139 856

2019年入試になって、かなりの数増えた。六大学をはじめ首都圏の大学付属校は概ね増加の傾向にあるといっていいだろう。しかも文部科学省はここ数年、私立大学に対して定員の厳守を要請してきた。つまりそれくらい私立大学の定員はいい加減だったのだが、違反する大学に対して補助金を出さないという強い態度に文部科学省が出たことから、各大学が定員を厳守するようになって、私立大学の門はかなり狭くなっている。そこへきて大学入試改革の不透明感が続くとなると、これはやはり中学入試に傾く保護者が増えるのは当たり前だろう。

これは少子化に悩む塾業界にとっては神風のようなものだ。同じようなことが実は「ゆとり教育」の時もあった。学校では円周率を3で教えることになった。このときもその変化に不安を感じた保護者が、中学受験に舵を切った。それで塾業界は一息つくことになった。

で、今回も同じように神風が吹いているわけだが、前回のように塾業界にプラスになっているかというとそうでもない。実は首都圏の中学受験は寡占化が続いているので、利を得ているのは一握りの業者になっている。

その最大の受益者がSAPIX小学部ということになる。

 

やはり無理がある

大学入試に関して、英語の民間試験の導入はやはり無理がある。

読む、聞くはこれまで、センター試験でもできたが、書く、話すはできていない。もちろんセンター試験はマークシートだから、実際の記述式試験は困難なわけで、だからこれまでは大学の二次試験で行われてきた。

しかしセンター試験だけで入学できるところもあり、そうなると学生たちが「書く」「話す」という学習をしなくなってしまう。だから試験に導入したい、とそこまでの論理はわかる。

しかし、それを民間試験に委ねてよいかというと、そういうわけにはいかない部分がある。今回問題になっているのはいろいろあるが、わかりやすいところで言えば、実施会場の問題がある。ある民間試験の会場は北海道では札幌市しかない。とすれば、それ以外の道内の生徒は、その試験を受けに来るのに札幌まで移動しなければならない。単純に移動するだけでも北海道は広いから、相当な時間がかかる。かつ宿泊しなければいけない、ということになったら、公平性は保たれない。

だからセンター試験の中に組み込む以外に道はないのである。しかし、それではまた膨大な予算がかかる、と役人は考えているに違いない。しかし、そのコストを受験生に振りむける方がよほど問題なのだ。